主軸を決してブラさず実写化した名作
卓球を描いたスポーツ漫画として今もなおトップクラスの人気を誇る松本大洋の名作漫画『ピンポン』。
スポーツに身を捧げる高校生たちの青春が描かれているこの作品ですが、身に染みるセリフがとにかく多く卓球に興味がなくとも充分に楽しめます。
そんな名作漫画を窪塚洋介主演で実写化した『ピンポン』は驚くほど原作のメッセージを崩さず作られた名実写化と言える作品でした。
原作は全5巻であり、もちろん本作は原作からいくつかのエピソードをカットしています。
カットされたチャイナのエピソードや、バタフライジョー対スマイルなどのエピソードも秀逸で残念ではあるのですが、尺の都合上、仕方のないことであることも確かです。
何よりも驚くことは松本大洋の描く、少しエキセントリックな世界観を本作はほぼ完全に再現している部分。
心理描写として幾度となく出てくるヒーローの存在や、レトロフューチャーされた様々な小道具など映像面でも飽きさせることなく作られており、「ああ、松本大洋の世界を観ているんだ」と何となく思うことができる本作。
そして、重要な物語部分ですが、多少の変更を加えながらもまとめ方も上手で、実写版だけを観ても中に浮いた設定等が残らないようになっています。
窪塚洋介、ARATA(現:井浦新)、中村獅童などおよそ高校生に見えない俳優たちの演技も秀逸なのですが、本作で特に注目したいのがアクマ役の大倉孝二。
誰よりも努力しているのに「才能」を持てず、憧れの人にも興味を持たれないアクマの人物像が驚くほどのクオリティで再現され、「飛べねえ鳥もいるってこった」のセリフには胸が締め付けられる想いがします。
そんなこんなで本作はとにかく大好きで、漫画と併せて学生時代は何回も観ました。
アニメ版もなかなかの良作だと聞くのでいずれ鑑賞してみたいと思います。
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